高次脳機能障害について

1.高次脳機能障害とは

交通事故により脳が損傷されたために生じる記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害などの認知障害や感情易変、暴力・暴言、自己抑制の低下などの人格変化を症状とする障害です。

高次脳機能障害は見逃されやすい障害です。

なぜなら、はっきりした画像所見が必ずしも得られず、症状も日常会話などからはうかがえず一見して明らかではないからです。しかし、仕事や日常生活には支障を来します。

具体的には以下のような症状が見られます。

①物忘れしやすい。
②新しいことが覚えられない。
③集中力がない。
④計画的な行動や複数の行動ができない(例えば料理など)
⑤怒りっぽい。
⑥暴言・暴力を振るう。
⑦大声を出す。

2.どんな場合に高次脳機能障害を疑うべきか。

①意識障害
事故直後の意識障害(半昏睡~昏睡で海岸・応答しない状態)が少なくとも6時間以上、もしくは健忘症あるいは軽傷意識障害が1週間以上続いた症例

②診断書の記載
診断書に高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の記載がある症例

③症状
記憶・記銘力障害、失見当識、判断力低下、注意力低下、性格変化、易怒性、感情異変、多弁、攻撃性、暴言・暴力、幼稚性、病的嫉妬、被害妄想、意欲低下などの高次脳機能障害を示唆する具体的な症状や失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経徴候が認められる症例、知能検査など各種神経心理学的検査が施行されている症例

④画像所見
画像所見(CT、MRIなど)において事故直後に点状出血が認められる症例、少なくとも3ヶ月以内に脳室拡大・脳萎縮が確認される症例。

(以上につき、平成12年12月18日付「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて」(高次脳機能障害認定システム確立検討委員会による)を参照。)

3.後遺症として高次脳機能障害が認められる場合の後遺障害等級は?

自賠責保険における脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方は以下のとおりです。

障害認定基準 補足的な考え方
1級3号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」 「身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの」
2級3号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」 「著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができなもの」
3級3号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」 「自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの」
5級2号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」 「単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの。」
7級4号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外に労務に服することができないもの」 「一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの」
9級10号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの」 「一般労働を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの」

なお、現行の自賠責保険後遺障害認定基準は、労災の障害認定基準に準拠している。労災の認定基準は、脳に器質的損傷のあることを前提としており、上記「補足的な考え方」が導入されたからといって、従来の等級認定基準が変更されたものと理解してはならない。

(以上につき、平成12年12月18日付「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて」(高次脳機能障害認定システム確立検討委員会による)から抜粋)